無地染めについて②
皆様こんにちは
前回に引き続き引染で、今回は黒系の引染についてアップします。
黒引染(三度黒)
黒地色の引染は、古くより各種の方法で染められていましが、、現在三度黒と呼ばれているのは、黒色用植物染料(ログウッド)を重金属により不溶化固着して、生地に堅牢な黒色を染色する方法で、蒸しなどの染着工程を必要としません。染料と固着剤を3回引染して黒色となるので一般に「三度黒」と呼ばれます。ただし、この三度黒による引染は使用する重クロム酸カリ中の6価クロムが有毒であるので現在このままの染法を行う工場はほぼないかもしれません。
1. 三度黒引染の工程
- 端縫
身頃、衿、衽、袖等を一連のものにするために絵羽縫を解き、手縫いやミシンによって継ぎ合わせます - 伸子張り
端縫いされた生地の両端を張り木で止め、生地がしわにならないように伸子を張る作業となります。 - 地入れ
色引染と同様ですが、ふのり液で行います。模様際は特に念入りに行い、生地の裏面も十分に刷毛摺りします。地入液の濃度は、模様場の糸目糊・伏糊の種類や性質等によって代える必要がございます。 - ログウッド引染
ログウッド液を生地表から刷毛引きして、裏を返し再度表を十分に刷毛引きします。乾燥はできるだけ早く十分に行う必要がございます。 - ノアール引染
ログウッドに数々の媒染剤を加えて加工したログウッド還元液で、刷毛引きします。乾燥はログウッドと同じです。 - 重クロム酸引染
ログウッドの酸化発色のために用います。刷毛引き・乾燥は前2回と同じですが、重クロム酸の濃度が淡い場合は赤味黒に発色し、濃い場合は後から生地に脆化のおそれが生じます。 - 水洗
三度黒は不溶性染料のため、伏糊や紋糊を洗い流すだけでなく、生地に付着している染料かすを十分に洗い流しておく必要がある。白い下着を重ねて着用する場合が多いから、摩擦による色落ちには十分気を付け、豊富な水で長時間洗い流すことが大切です。 - 刷毛刷り
水洗した後、再度張り木・伸子で引っ張り乾燥させます。硬刷毛により生地の表面の表裏を十分刷毛摺りし、染料や不純物を取り除くと同時に、生地に光沢を与える。
2. 黒引染のぼかし
一般に「足つけ」といって、ぼかし足を染料のブラック液で先につけておくのが普通です。
3. 使用染料・助剤
- ログウッド:植物染料の一種でメキシコや中南米に生育するヘマトキシロン樹の幹から抽出物を原料としています。この中の主成分であるヘマチンは重金属と結合して不溶性レーキ(有機顔料)となります。
- ノアールナフトール:ログウッドに酢酸・シュウ酸と重クロム酸カリ・クロム明ばん・木酢酸鉄の媒染剤に酸性亜硫酸ソーダ等を適量加えて加工し、ヘマチンと金属の結合を抑制し、安定化した暗緑色のログウッド還元液です。これを酸化すれば黒色不溶化レーキとなります。
- 重クロム酸:重クロム酸は、ログウッドの中のヘマチンと最もよく結合します。この結合には酸化作用も必要なために重クロム酸カリを主としています。
ブラック引染法
1. トロ引き
直接染料を用いる方法で引染染料液に糊料を多く入れて粘度を持たせて刷毛引きし、引染後、直ちに濡れ蒸しする方法を名古屋ではトロ引きと呼んでおり、京都でも染められています。
- 準備
通常の引染のように張り木にて生地を張り、伸子をかう。地入れは引染部分には施さず、模様防染部分の裏面には、ふのりでよく地入れを行います。 - 染料液
水1Lに染料を140g~150gの割合で熱湯にて溶かします。その液中に2.5~3%の精米糊粉・CMC等を加えて調整します。 - 引染
引染工場の湿度を70%に調整し、2~3人が同時に1反の生地を手分けして引染します。表・裏ともによく撫で返します。引染が終わったら直ちに伸子をはずし、挽粉を生地の表裏共にまんべんなく振り掛けます。 - 蒸熱
挽粉を掛けた生地は吊り枠の針に掛けて千鳥状に順次吊り下げる。低圧蒸気で25~40分間蒸熱します。 - 水洗
大量の水や流水で直ちに洗い、余剰の染料糊分を除きます。同時に友禅の防染のりも落とします。
2. 酸性染料による引染
黒色酸性染料による引染は加賀友禅では早くから用いられています。色引染に準じて引染してから乾燥し、蒸熱、水洗で終わります。