パールトーン加工と通気性
皆様 こんにちは
今回は本家本元のパールトーン加工のことについて取り上げたいと思います。
私もこれまで色々な呉服店様や百貨店様においてご来場のお客様にパールトーン加工の効力実演をさせていただきました。
実際にパールトーン加工済みのお着物にお醤油や水をかけて撥水防汚効果をご確認いただくデモンストレーションなのですが、実際の効果に驚かれつつも皆様二言目には「せっかくの縮緬の風合いが変わったら困る」であったり「着物の素材がレインコートのようになってほしくない」というように、風合いと通気性に関して心配されるケースが多くありました。
撥水効果が強いと、反面どうしても生地に仕掛けがあると思われ、生地上に膜のようなものを塗りたくっているのではないかと言われたこともございました。
パールトーン加工は自社開発の撥水溶剤を生地の繊維の糸一本一本に浸透させることで撥水効果を出しています。
ですので皮膜を作ってしまう表面コーティングとは異なり、生地目は開いていますので通気性も阻害いたしません。
上記のように糸から効果をもたせているのでパールトーン加工済の糸と未加工の糸を水の入ったビーカーに浮かべてみると、パールトーン加工済の糸が浮いているのに対して、未加工の糸は水を吸い、膨潤して沈んでしまいます。
又、当然ながら生地の表裏も関係なく効力は発生しますし、仕立上りのお着物をパールトーン加工すると、縫込みの中等の実際通常見えない部分も撥水効果は同様に発生いたします。
パールトーンのデモンストレーションでは縮緬の袱紗を使用して水が霧状に貫通する瞬間を見ていただいているのですが、水が通るのであれば当然ながら空気も通ります。
風合いに関しても、創業92年目のノウハウを活かして、絹本来の風合いや光沢はそのままでお着物本来の着心地が保つために、お預かりしたお着物の素材や色、加工前・加工後のコンディションを人の目と人の手で確認し、そのお着物に対して最適な加工をするようにしております。
時折パールトーン加工した着物は暑い?であったり 増量加工で生地を肉厚にしている? といわれることもございますが、元々目の詰まった生地の場合や製造時に糊を使用しているお着物で、その糊が湯通し等で十分脱落していない場合ですとパールトーン云々に関係なく暑いものもございますし、生地を肉厚にする加工はそもそも表面上のコーティング加工自体していないことからできません。
例えば、ろうけつ染めのお着物へのパールトーン加工の場合、パールトーン加工の工程に至るまでの段階で「ろう」の脱落具合によって風合いは異なります。
パールトーン加工前の地入れ等で十分に「ろう」成分が脱落しておりますとパールトーン加工後もやわらかな風合いとなりますし、反面、「ろう」成分の脱落が不十分であると多少堅い風合いにもなります。
作り手さんが着用される方へ提供したい風合いは地入れ・湯通し・ゆのし等の整理工程において左右されるケースが多いように感じられます。
新しくご購入され、着用を楽しみにされておられるお着物から、お母さんやお婆さんから譲られたお着物・亡くなられたお婆さんが仕立てられたお着物、文化財等々これまでの歴史の中で様々なお着物に対してパールトーン加工をさせていただきました。
それぞれのお客様の想いがこもったものであることを頭に置き、我々社員は日々対応させていただいております。
これからも我々はパールトーン加工を通じてお着物着用時の安心をお届けしたいと思います。