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おしらせ

シミと補正について

前回の地直しや補正の関連でシミや変色等についてもまとめてみたいと思います。

・汚れの分類
一般的には汚れやシミを分類すると「水性のシミ」「油性のシミ」「不溶性のシミ」に分類されます。
しかし実際には様々なシミが合わさった状態となっているケースが多いです。

 

 

例えばコーヒーの場合、水性のシミに分類されますが、厳密には色素の要素を強く含んでいますし、又、ミルクが入っていたりするとたんぱく系の要素も含んでしまいます。細かく分類していくと以下のようになります。

a.水性のシミ
お醤油・コーヒー・ジュース・酒類等の水に溶けるシミ

b.油性のシミ
チョコレート・口紅・機械油・食用油等の油に溶けるシミ

c.不溶性なシミ
泥・墨・墨汁・ゲルインキのボールペン等の水にも油にも溶けないシミ

d.樹脂のシミ
絵の具・ペンキ・接着剤等の油性のシミの中で特に頑固なシミ

e.色素のシミ
赤ワイン・果物・マーカー等の色の濃い食品やインクなどに含まれた色素が付いたシミ

f.たんぱくのシミ
血液・肉・玉子・牛乳等のタンパク質の成分が付着したシミ
カビの原因になるだけではなく、時間の経過や熱を加えることで不溶性のシミに変化します。そうなると落とすのは困難になってしまいます。

g.漂白のシミ
古いシミ・黄ばみ・色移りしたシミ
水性や油性のシミが酸化してできる変質した頑固なシミ

 

 

 

 

・シミをつけたときに気をつけないといけないこと

①絶対にこすらないでください
スレ(生地の毛羽立ち)や色抜けの原因となります。スレは完全には直らないことが多いです。

②絶対にたたかない
叩いていても実際には少しこすってしまいスレや色抜けの原因となります。濡れたおしぼりと生地の摩擦は非常に強くなります。

③早くしみ抜きに出すこと
シミ(汚れ)は放置しておくと変色となります。変色すると上記にもあるように部分的に色を抜いて処置することからしみ抜きの何倍も費用がかかります。

 

 

 

・通常の着用で着物に付く主な汚れ

a.衿
ファンデーション汚れ・皮脂

b.袖
飲食物・袖口の皮脂・汗汚れ・袖底、袖丸の沈着汚れ

c.肩山、袖山
雨ジミ

d.胸
汗ジミ

 

e.前身頃
飲食物

f.後見頃
泥はね

g.裏地
たんぱくのシミ・血液(居敷当)・カビ・胴裏の変色

 

・それぞれのシミの特徴について

①ファンデーション汚れ(主に油性)
人によって左右の汚れの付き方に差があります。
皮脂や汗も入っていることもあり、放置しておくとファンデーションやけ(変色)となることが多いです。

②皮脂汚れ(主に油性)
主に衿・袖口・裾 など肌と直接触れるところにつきます。

③沈着汚れ(水性・油性の混合)
袖口や裾についた汚れが時間の経過で沈着化してしまった汚れや裾に階段や床との摩擦によってすりこまれるように付く汚れ
丸洗いの作業では取り切れないので補正等の作業が必要となります。

④飲食物(水性・油性・色素・たんぱくの混合)
色々な成分が含まれていることから丸洗いだけでは取り切れない場合もございます。できれば補正依頼時に何が付いたかという情報をお伝えした方がいいです。
日本酒やビールなどは乾くと発見しづらく、後々変色の可能性もあるので注意が必要です。

⑤雨ジミ(水性・油性の混合)
お直しは水を使用することからあまり広範囲だと縮む可能性があり、洗張りの対応となることもある。

⑥汗ジミ(水性・油性の混合)
胸や背に丸や楕円状に地色が濃くなったように出ます。袷の場合裏地も同じ状態なので注意が必要です。

⑦泥はね(水性・油性・不溶性の混合)
アスファルトでの泥はねは排ガスなどの成分も含んでいます。

⑧血液・たんぱくジミ
しみ抜きしても取り切れない場合も多いです。また、熱がかかると固着化してしまい取るのが非常に困難になります。

⑨胴裏などのカビ、変色
しみ抜き対応は非常に困難なので交換をお勧めしています。

 

 

・保管中の変色について

黄変:生地に付いたタンパク質のシミやアルカリ分が付着した部分が長時間の保管中に変色してしまうこと等を黄変と言っています。
しみ抜きではなく染色補正や金銀加工の柄足しなどで対応していくケースが多いです。

・黄変への対応について

①染色補正
a.黄変部分の地色を抜いてしまってから周りと同じ色になるように染料で補正します
b.紬や江戸小紋、細かな柄のお着物は地色を抜いてからの柄や色の修正が困難なので作業ができないこともあります
c.汗ジミも黄変してしまったら色を抜く対応が必要な場合も多いです
d.広範囲の黄変で補正で対応しきれない場合は染め替えの対応になる場合もあります

②柄足し
a.胡粉や金彩、銀彩を使用して上から柄を足すことで、生地に負担をかけることなく黄変を隠すことができます
b.黄変がでてしまった胡粉は、上から更に胡粉を塗ったり又は色を吹き付けすることで黄変を目立たなくさせることができます。
c.黄変のお直し部分のみ柄足しをすると柄のバランスが悪くなる場合があるのでバランスをとってシミや黄変がない場所にも柄足しをする場合もあります

 

 

・汚れ以外の現象と特徴について

①ヤケ
染料が太陽の光や蛍光灯の紫外線に晒されることで、色素が分解してしまい退色する状態です。このヤケを修復することをヤケ直しと呼びます。
a.汚れ跡に残る汚れヤケ、日光や照明による光ヤケ、タンスの中で発生するガスヤケなどがあります
b.化学染料よりも天然染料の方がヤケがおこりやすい傾向にあります
c.紫 青のように青みがあるものは色ヤケがおこりやすい傾向にあります

②スレ
絹特有の故障で、絹を摩擦すると白く色がはげたようになることをスレといいます。その部分は絹特有の光沢を無くしています。
顕微鏡で見ると絹の表面が毛羽立っていることで光沢がなくなり、色が脱色したように見えます。
生地表面を斜めにすかして見てみますとスレの状態が見えることがあります。
重度のものはお直しは困難です。

a.見る角度によって直し跡がわかるものもあります
b.帯下や胸、脇部分は着用の度に帯にあたるのでスレ直しはお勧めしません
↓帯下のスレ

 

 

③箔の変色・はがれ・べたつき
a.箔の変色については新たに上から箔を張ることで修正は可能となります。
b.箔のはがれについては型が必要なケースもあります
c.箔のべたつきは吹き付け加工で対応することができますが完璧には抑えられない事が多い
d.仕立上がったままでのお直しができない場合もあります
↓箔はがれ

 

 

④金コマ刺繍などのほつれ
金コマ:きものの上前部分に金糸で縁取りして刺繍状にし、赤糸で綴じた文様の部分のことを言います

a.金コマ刺繍は留め直すことができますが、基本的には全体を一度外してからつけ直します
↓金コマ刺繍のほつれ

 

⑤虫食い・穴あき
a.直し方については大きく分けて共色の糸をわたしてふさぐ場合と裏から生地をあててふせぐ二通りがあります
b.いずれの直し方でも直し跡は出てしまう
c.直し跡に柄を足すということもあります
↓穴あき

 

少し寄り道してしまいましたが、次回は仕上げ加工の湯のしについてまとめてみたいと思います。

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